2014年02月17日

北海道の大学。生き残りの鍵は経営力と企画力。

 2020年には北海道の大学は半分になるのだそうだ。学生の数が減るのだから当然ではあるが、次世代を担う若者の教育機関・大学の再編なのだから、社会に与えるインパクトも強大なものになるだろう。国公立大学は学生や企業双方からのニーズがあるので、それなりに数を維持できると思うが、私大は厳しい。銀行と同じで、一方的に閉校されてしまうと、卒業生や地域社会への混乱が大きくなるので、スムーズに再編してもらわなければ困る。そんな状況下でも、経営的にやり手の大学は既に手を打っている。以前のブログでもエントリしたが、第一フェーズは既に終了していると思う。しかし、第二フェーズはなかなか進まない。大学名を変更したり、奨学金・授業料値下げの拡大の動きが目立つ程度だ。大学の質は教育の質であるとは思うが、外部から窺い知れるのは経営戦略ぐらいである。ここでは、経営戦略にしぼって私学を取り上げてみる。
 
 私学で歴史・規模でも一番大きい北海学園であるが、攻めの経営としても一番だろう。東豊線の新駅、「学園前」を自腹で整備し、札幌市に寄進した。学校の設備と無関係の巨大投資を疑問視する声もあったが、アクセスの良さは、仕事を持つ二部学生や教員の募集にも大きく寄与した。さらに、北見から引き上げたライセンスを使って、学園前に北海商科大学を開学し、加えて、北海学園大学のロースクールも作った。巨大投資を回収する為に次々に手を繰り出し、それなりに成功を収めている。北海学園は以前は、公務員のイメージが多かった。だが、国公立大学の学生の公務員志向が強まり、以前ほど強みがなくなっていると思えたが、道内で最も社長を輩出している大学の座を日本大学から奪い一位となった。ニトリの似鳥さんやハドソンの工藤さん、クリプトンフューチャーメディアの伊藤さん、オフィスキューの鈴井さん等、安定感は無いが当ると場外ホームランのような人材が特徴になっている。やる事はほとんどやっているので、改めて手を打つ必要が無いのが北海学園なのだが、最大の弱点(同時に強みでもあるが)は「北海学園」の名前だ。道内では知名度一番の私大であるが、道外学生にはピンと来ない。水産系の大学で、オホーツク海に面して立地してそうなイメージを持つそうだ。札幌大学、札幌学院大学、北星学園大学と比べても、道外出身者が圧倒的に少なく、9割が道内だ。酪農学園等はその名前と北海道のイメージマッチし、希少価値でフラグシップである獣医学科の強みで道外から多くの学生を集めているのとは対照的だ。また、便利な反面、キャンパスが小さく、せっかく北海道の大学へ行くのに北海道らしさが無いと意味が無いと考える学生も多いそうだ。その意味で、同じ豊平区の札幌大学とのシナジーを期待する向きもあるかもしれない。北海学園札幌大学として改組し、山鼻の工学部等を西岡に移転させれば、豊平で教養課程を受ける工学部系の学生の負担が減る。「札幌大学」の名前があれば、道外からの学生集めにも寄与するだろう。(少なくとも、どこにある大学かはわかる。)ただ、文型メインの札幌大学と北海学園は学部のバッティングが多く、しかも、北海商科を抱えている北海学園が無理をする必要が無いし、道内では認知度のある北海学園大学の名前を変える必要があるのかというOBの声もあるだろう。また、札幌大学も英語やロシア語等の外国語学科系の評価が高く、単独で生き残りを図りたいと考えているだろう。

 一方、北海道の私学の双璧、北星学園であるが、北海学園と違ったアプローチが興味深い。北海学園は攻めの経営で、北見から撤退し、豊平キャンパスに高校を含めた系列校を集中させ、地下鉄直結という利便性は最大限に押し出した。逆に北星学園は、地域の要望に応え、北星余市高校を開校したり、稚内北星学園大学の立ち上げに協力したり、地域の活性化に協力的だ。プロテスタント宣教の理念からスタートしている学校である事を考えると、最終的には同じくプロテスタントの理念を持つ酪農学園大学とも合流する可能性がある。ただ、獣医学部が強い酪農学園大学は自力生き残りの力もあるだろう。プロテスタント理念に関係なく、地域に根ざした教育機関を維持していくという理念で、非プロテスタント系の大学の受け皿になる可能性もある。立ち上げ時には協力したが、法人的には関連が無い稚内北星学園大学は日本最北端の大学だ。IT系の教育カリキュラムには定評があるが、4万人足らずの稚内市でこういう大学のある意義は大きい。札幌であれば、大学・専門学校が多くあるが、北海道の地方で生きていこうとする若者には教育の選択肢が限られてしまう。稚内はロシアとの交流が本格化すれば重要度が飛躍的に高まる。将来の展望が厳しくとも、維持していかなければならない地方の大学もあるはずだ。

 稚内北星が最北端の私立大学なら、日本最北端の「公立大学」は名寄市立大学で、看護・福祉系が強い。公立大学としては、釧路公立大学が北海道では有名であるが、地域の強いニーズによって大学化しているケースが多い。ただ、その釧路も私大の日赤看護大学の設立の打診を経済難の為に拒否した。結局は、最北端の「国立大学」北見工業大学のある北見市が受け入れる。社会的ニーズが強く、しかも日赤系の看護大学は、地方自治体にとっては垂涎の的であり、逃がした魚は大きいと悔やむ声も大きいそうだ。道北の大学の話題で言えば、私立の東京農業大学のオホーツクキャンパスは学生の9割が道外出身者だ。道東の国立帯広畜産大学も三分の二が道外出身者で、北海道とイメージが合致する学科で、プロモーションがうまくいけば、北海道でも全国から学生を集める事ができる。(逆に言えば、道外プロモーションを気にしなくてもやっていける基盤があるのは、私大では北海学園大と藤女子大ぐらいだろう。)北大も半数が道外出身者であり、北大の学長が道外の学生が住民票を北海道に移す事で地域経済や税収に貢献していると言っているが、そのとおりであろう。ただ、地域への貢献という意味では、もっと高いレベルで自画自賛してほしいとは思うが。

 さて、道外の例になるが、全国で一番、注目を浴びている公立大学が秋田県が経営主体の国際教養大学だ。教員の半数が外国籍で、学生も留学が義務付けられる。教員が外国籍なので、必然的に授業の大半が英語で行われる。北海道に匹敵する人口密度の低さの秋田県では、学生は邪心なく勉強に打ち込める。企業からの評価も高く、全国区の人気で秋田出身者は2割に満たないほどだ。一方、教員ではなく留学生が半数を占めるという変り種の大学が、立命館アジア太平洋大学だ。アジアのゲートウェイ九州の大分県の「人里離れた」山頂にキャンパスや寮があり、日本人学生と留学生が共同生活する。こちらは、日本人学生と留学生が半々であるメリットを生かし、日本人学生は英語、留学生は日本語を完全にマスターすると同時に、観光・コミュニケーション・経営学等の学位を取るシステムだ。どちらの大学もグッドアイデアだ。秋田県は一時期流行した「アメリカの州立大学日本校」跡を知恵を絞って再利用したものであるし、立命館アジア太平洋大学は経営力に長けた立命館がバックにある。こういう事例を見ていると、金はかかるがやり方次第ではないかと思う。例えば、北海道はニセコ地区のように勝手に外国人が集まってきている地域がある。別荘を持ち定住をする外国人も今後増えてくるだろう。となると、インターナショナルスクール以上の英語話者が学ぶ事ができる大学の必要も出てくる。北海道には観光インフラや農業から発展したバイオの集積もあるし、豪雪・寒地地域ならではの知識集積もある。立命館アジア太平洋大学のように、日本人学生も外国籍学生も一緒に学べる大学のニーズがある。となると、全国から学生が集まるし、新幹線が開通すれば、札幌・函館は日帰りできるので教員の確保も容易になる。東京から通勤も可能だろう。このままいけば私大は半減するかもしれない。しかし、隠れたニーズを掘り起こし全国から学生を呼び寄せる発想があれば生き残りは可能だろう。


 
 
posted by 瀕死の北海道経済への処方箋ブログ at 15:13| 学校・教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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