2016年08月15日

「再生・再建」は岩田家のお家芸?

北海道に限って言えば、岩田聡氏よりも、氏の父親である岩田弘志氏の方が馴染みのある方が多いかもしれない。室蘭市長を4期16年勤めた市長だからだ。岩田聡氏が、札幌生まれ、札幌育ちの真駒内出身であるのは、そこに道職員住宅がある為だ。ただ、岩田聡氏は父親(弘志氏)の仕事が道庁の観光課であった為、全道各地への転勤もあり、新しい学校に馴染めず、いじめられる事もあったと述べており、幼少期は札幌以外でも過ごしているかもしれない。弘志氏の北海道庁でのキャリアハイは、商工観光部長であったが、その前には胆振支庁(広大な北海道庁の地域分け単位で、胆振支庁は室蘭市に置かれていた。)のトップ等も歴任していた。その後、胆振支庁トップの経験を買われ、財政破綻危機となった室蘭市の再建役として、岩田弘志氏に白羽の矢が立った。もともと、1970年代前半から室蘭市は「鉄冷え」が深刻になり、労働者保護と失業対策最優先の急進派の社会党系市長が2期務めた。それまで、室蘭の市長は市役所関係の生え抜きが担当していた所に、急進左派の市長が誕生した為、鉄冷えに加え、市政も混乱し、財政再建団体の一歩手前になっていた。当時の室蘭市は、道内人口トップテンに入るだけでなく、人口密度だけで言えば、札幌市に次ぐ都市であった。しかも、当時は既に札幌市が政令指定都市として独自性を持ち、道庁の管理から離れていた為、道庁内での工業都市室蘭の重要性がますます高まっていた。事態を重く見た道庁はエース級道庁マンを室蘭市長に送り込む決断をしたわけだ。55歳で商工観光部長という当時の道庁要職にいた弘志氏は、そのまま道庁に残留していたら、まだ、上があったかもしれない。いくら、道庁の指示といっても、選挙をパスする必要があるし、市長になったところで財政破綻寸前の自治体経営などイバラの道だ。「私にはこんな大任は荷が重すぎます。」と言って拒絶しても、非難される筋合いは無い話だ。結局、弘志氏は立派に「火中の栗を拾う」役目を果たす。聡氏が札幌南高校を卒業する同じようなタイミングで、道庁を退職し、選挙に当選し室蘭市長としてのキャリアをスタートさせる。その後、室蘭市の19万人いた人口が、文字通り半減したのだから当然だが、室蘭市にも激烈なリストラの必要があり、その前提条件として財務の透明性が求められた。弘志氏は外部からの財務調査を受け入れるなどの思い切った手を打って難局を切り抜ける。と、同時に「白鳥大橋」の建設を決断するなど、攻めの政策も行った。室蘭市は上辺北側が陸地と繋がったコの字地形の港湾都市で、構造的な問題として、コの字の端同士は海なので行き来ができない。しかも、室蘭市の中心地はコの字の下辺側にある。この地形が渋滞や周辺部の土地開発を阻害していたのを、南北に橋を繋げる事で一気に解決しようとした。コの字から、ロの字にするわけだ。1000億超えの建設費と、50億円の年間維持費がかかるとされていたが、財務再建の目処をつけた弘志氏は、白鳥大橋建設を決断する。しかし、一難去って、また、一難で、今度は室蘭市を支える製鉄所の撤退騒動が持ち上がる。全市挙げての残留運動で何とか、引き止めに成功し、弘志氏は名市長として引退する。中心産業の製鉄業だけでなく、観光課上がりの弘志氏は室蘭の観光地に力を入れる。もともと、室蘭市は登別温泉や洞爺湖温泉の二大有名温泉街に挟まれている。そこでチキウ岬や周辺海域でのイルカ・クジラ鑑賞、マリンスポーツのアピールに力を入れた。関東以北最大の吊り橋である白鳥大橋自体も観光名所化した。今年、北海道新幹線開通に合わせて、森町と室蘭市の間で、 森蘭航路を復活させたが、その目玉はホエールウォッチングも可能という事だ。また、弘志氏が死守した製鉄所群も、加工時に副生ガスとして、水素を発生させる特徴がある為、安倍政権が推進する水素社会への戦略都市の一つと見なされるようになった。弘志氏の蒔いた、もしくは、死守した種が実を結びつつあるようだ。

一方、聡氏も父親の後を継ぐが如くに、HAL研究所の再建という「火中の栗」を拾う事になる。しかも、室蘭市長になった弘志氏は、HAL研究所に就職しようとした聡氏に激怒し、聡氏の担任教授だった東京工業大学の教授に、辞退するように息子を説得してほしいと懇願した事もあったそうだ。室蘭市長から息子の説得を懇願された教授は面食らったろうが、最終的には教授が、この室蘭市長である父親を説得するような形になったそうだ。あっぱれな話だ。そんな経緯があったのに、想像以上に早く、聡氏は火中の栗を拾う羽目にあったのだから、父親としては複雑な気持ちだったろう。しかし、血は争えない。結局、息子も父親と同じように、破綻企業を立て直し、名経営者と言われるようになる。
posted by 瀕死の北海道経済への処方箋ブログ at 22:02| 岩田聡さんについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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