たしかに、最後の箇所を見ると自由落下にロールしている。
実は観測ロケットの最大の売りは単に宇宙空間に到達することだけでは無く、自由落下時に4分もの間、微小重力の状態、地上と比べると何万分の1の重力を実現できるという事だ。微小重力状態を作る事ができれば、今後、宇宙空間に到達させる機器の部品の性能チェックができるだけでなく、新たな素材を作る為の合成や医学創薬産業にも有益な実験空間になる。というのも、地上の生物は皆、重力で引っ張られているというか、押しつぶされているのだそうだ。別に歳を取ると顔の肉が引力でたるんで嫌だねみたいな話ではなく、生物を構成する細胞だったり、病原菌のタンパク質も押し潰された形で地上では存在しているという事らしい。ところが、それは薬を作る上で困った状況でもある。タンパク質の押し潰されていない本当の形がわからなければ、その形にあった構造を持った薬を発見する事ができないのだそうだ。逆に言うと、宇宙や微小重力状態でその病原体の様子を観察すると、本当の形がわかり、スムーズに創薬できるというわけだ。実は北海道の上砂川の炭鉱跡を利用して、微小重力実験施設が作られていたのだが、国際宇宙ステーションに日本の実験棟きぼうが出来た事もあり、廃止されてしまった。別にISSできるなら良いと思うかもしれないが、それは方便であり、コスト的にも、機会的にも全ての研究者がISSを利用できる訳ではないし、廃止しなくて済むのだったら存続した方が良かったのだ。というのも、この手の実験棟はアメリカとドイツに一つづつしかなく、上砂川の施設はアジア唯一で世界一の実験施設と言われていた。これはまずいと立ち上がったのはHASTIC(北海道宇宙科学技術創成センター、Hokkaido Aerospace Science and Technology Incubation Center)、植松電機の協力で、国の力に頼らずに民間で微小重力実験棟のコスモトーレを作ってしまった。上砂川では十秒の微小重力状態を作られたのが、赤平の植松電機内の施設では三秒程度となってしまうが、上砂川では一度の実験に300万円近くの使用料がかかったものを、一回3万円で実験機会を提供し、年間60近い利用があるそうだ。つまり、週1回ペースで微小重力実験が行われており、企業、研究所だけでなく、学生の個人的な研究、海外からの訪問もあり、きぼう実験棟ができてからも北海道がアジアの微小重力実験のハブであり続けている。微小重力実験にはマーケットがまだある。何せ、JAXA自体が植松電機のコスモトーレを利用して実験をしてるのだから、きぼう実験棟ができたから上砂川が要らなくなったというのは如何に国の方便だったかがわかる。ちなみに、このHASTICと植松電機がインターステラテクノロジズの前身SNS社時代のロケットの共同開発と打上げ業務を請け負っていた。彼らは北海道の宇宙産業のお助けマン的な存在なのだ。
微小重力実験には可能性がある。手段は微小重力実験棟、飛行機による自由落下、観測ロケット打上げ、国際宇宙ステーション内実験棟の4つであるが、微小重力実験棟と観測ロケットは北海道にある。しかも、JAXAの鹿児島県の観測ロケット打上げは時期が限られており、雪原で機体回収もしやすい北欧や南極等海外での打上げが増えている。となると、国内でオンデマンド的に実験ができるのは大樹町のMOMOだけになる。しかも、MOMOは一回の打上げ費用が5千万円。そこから人件費を引いて、量産効果が出れば2千万円台のコストで打上げが出来そうな感じだ。クラウドファンディングの目標額も大体そのあたりだった。それで、十秒で300万円もした微小重力実験が四分もできるとなると結構な収益源になる。(微小重力実験棟だと重量のあるものでの実験もできるので単純比較はできないが。)ここに、観客の宿泊先や出店とのタイアップ、ロケット広告での収益を入れると十分ペイする感じなのは理解できる。また、飛行機での実験に触れていないが、飛行機も自由落下に微小重力状態を作り出せるが、風圧の関係で精度がかなり落ちる。ただ、きぼう実験棟と同じように人の手による実験も可能なので引き合いは強い。これも大樹町の滑走路が延長し、スペースウォーカーやPDエアロスペースのようなスペースプレーンによって宇宙旅行ビジネスを目指すベンチャーが参入すれば北海道で可能になるかもしれない。北海道で微小重力実験が幅広く、低コストで頻繁に行われるようになれば、それこそ宇宙産業以外の素材やライフサイエンス産業の進出も増えてくる。衛星打ち上げだけが宇宙ビジネスではないのだ。

